2021年の占いを星座別で行いました。
それぞれの星座の来年の雰囲気を、
小話っぽくまとめています。
書かれている通りのことはまず起きませんが、
良い話だなと思ったら良いことが待っていますし、
ちょっと含みのある話だなと思ったら、
引っかかった箇所に関しては
気に留めておくといいかも知れません。
人物や状況設定などは、
意味がある場合もあれば、
意味がない場合もあります。
色のついている箇所は、
特に重要な箇所だったり、
ラッキーなんちゃらだったり
するかも(しないかも)知れない。
星座別ですが
占い自体は占星術ではなく、
タロット78枚を用いています。
目次
牡羊座
村に住む老人は、子供たちに語り聞かせる。
「昔は私も偉大なる勇者を夢見たものだ。冒険の旅に出るのだと家出をしたこともあった。月のない晩、斧と金だけ持ってね」
「えぇ、すごい。どうなったの?」
「いやぁ、残念ながら。家を出てすぐに森番に見つかって家に連れ戻されて、こっぴどく母親に叱られてしまったよ。しばらくは私も不満に思っていたが、今思えば狼や山賊なんぞに出会わなくて良かったな。きっとすぐに殺されてしまって、お前さんらとこうして話をすることもなくなってしまっていただろうから」
しかし老人は、平凡だった人生を思うと、時々ため息を吐いてしまう。
牡牛座
「先日頼まれた申請書、ここに置いておきますよ」
「今チェックしてしまうから、少し待っていてくれるかな」
研究者は手を休めて、申請書の内容を確認していく。
「どうぞ」
傍らにコーヒーが置かれた。
「おぉ、ありがとう」
「お疲れ様です」
申請書に不備はなく、二人は休憩がてらコーヒー片手に世間話を始める。
「最近はいかがですか?」
「順調だよ。発表はまだ先にはなるけれど、充実した論文が書けそうだ」
「良かった。もし僕に手伝えることがあったら、気軽にお声かけください。応援してますから」
「こうして話をしてくれるだけでも、息抜きになるよ。ありがとう」
双子座
「皆、用意はいいか! 出港だ!」
数ヶ月前晴れ晴れとした顔で拳を突き上げた船員たちは、今は荒波に揉まれて顔を歪ませていた。波への対応に追われて船上では怒号が飛び交う。いつかは終わると知っていても余裕を持ち続けることは困難で、皆が苛立っていた。
「早く終わんねぇかな。クソッ」
彼の悪態に応える者はない。さらに嵐の海には海獣までもが現れて、誰も彼もが死の覚悟を決めながらも海獣を追い返そうと奮闘した。
海獣が彼らに飽きていなくなった頃、嵐もまた通り過ぎようとしていた。疲労困憊の船員たちは崩れ落ちるように穏やかな眠りにつく。
「お。島だ」
かすんだ目で船長が言った。
蟹座
朝露に濡れた花々を見守るその人は、同性であっても見惚れてしまうくらいに美しかった。
「おはようございます」
思い切って声をかけてみると、その人は穏やかに微笑んで挨拶を返してくれた。
「これから学校ですか?」
「あ……はい! 部活の朝練があって」
「こんな朝早くから。大変ですね。頑張って」
年下の自分にも丁寧に話しかけてくれる。きっとこの人がこんなにも美しく見えるのは、見た目だけではなくて、その内面が美しいからなのだろう。
「ありがとうございます。頑張って来ます!」
「はい。いってらっしゃい」
また明日も同じ時間、ここにいるだろうか。胸が膨らむ。
獅子座
「なぁ、ちょっと聞いてくれよ」
「何?」
「自販機のジュース当たった」
彼は嬉しそうに両手に持った二本のジュースを掲げて見せた。いつもならばすごいね、くらいは言うけれど、今の私は虫の居所が悪い。
「あっそう。くれんの?」
「ふふん。どうしよっかなぁ。ほしい?」
「……別にいらないけど」
たかがジュースごときで喧嘩するのはごめんだし、これ以上当たり散らさないようにと顔を背ける。それでやっと彼も気がついた。
「何か機嫌悪い?」
そう思っているなら放っておいてくれ、という気持ちと、静かに聞いてくれるのであれば愚痴りたいような気持ちとが半々だ。どうしようか、と顔をしかめる。
乙女座
「ごめん。待った?」
両手を合わせながら首を傾げる初恋の彼女は、学校で見る時よりずっとかわいく見えた。私服の威力が凄まじい。
「俺もさっき来たところだから大丈夫」
お定まりの言葉を返しながら歩き出す。初デートの目的地は映画館だ。楽しみだね、なんて彼女は話しているけれど、俺は正直それどころではなかった。会話の流れも考えずに言う。
「あの。服、似合ってる。……えぇと、かわいい」
「あっ、本当? 良かった。昨日の夜、服選ぶのすっごく悩んで。だから寝坊しちゃったんだけど」
「大丈夫。むしろ嬉しい」
彼女は照れ笑いした。言って良かった、とほっとする。今日は良い一日になる予感がした。
天秤座
コツコツコツ、と静かな教室に筆記用具の音だけが響く。
「そこまで」
ペンを置いた。答案が回収される。次の試験は数学だ。休憩時間は短いが、最後の最後まで知識を詰め込んでおこうと鞄の中から参考書を取り出して蛍光ペンを引いた箇所をじっと見つめる。
今回の試験での成績は、来年のクラス替えに反映される。来年は大学受験である。より良い大学を狙える生徒が集められるAクラスに入って勉強を続け、何としてでも志望校に入りたい。両親からの期待に応えるためにも、失敗したくないという思いが日に日に強くなっていく。教室に教員が入ってくる。僕は参考書を鞄の中に仕舞い直す。
蠍座
「大丈夫ですよぉ。心配し過ぎですって」
寮内にはどことなく不穏な空気が漂っていた。このところ寮内で泥棒が出ているのだが、その犯人は外部の人間なのでは、という噂が流れていた。
寮内での盗難騒ぎ自体は一年に一度はあることらしいが、犯人が外部の人間であるとなると不安が増す。もし、ちょうどその人物が泥棒をしているところに自分が出くわしたら。
「たぶん、目くらましなんじゃないですか? そうやって噂を流すことで、自分に容疑が向けられないようにしてるんですよ」
同室の友人はそう言うけれど、今は彼女すらも信じられない。いや、これは、自分が疑い過ぎなだけだろうか。
射手座
「やるじゃん、お前」
あまり素行の良くない友人にそう声をかけられた自分は、何のことか分からず首をかしげた。
「ほら、調子乗ってた後輩。虐めて部活辞めさせたんでしょ?」
「は? それ俺じゃねえって」
「でもお前のせいだって聞いたけど?」
そういう空気が嫌で最近は部活に顔すら出していないというのに、上手く名前だけ使われてしまったらしい。
「胸糞悪いことするな……」
その後輩もかわいそうだし、自分のせいにされているのも気に食わない。だが、面倒事を避けるだけだった自分にも非がないとは言い切れない。
「いい加減、あの部活はこりた方がいいな。やるか」
「……お前らしいわ」
友人は軽く笑った。
山羊座
「……あーっ」
あと数点取ればランキング一位を取れたのに、と嘆きつつバタリと寝転がる。
既に日は落ちて、部屋は暗くなっていた。これ以上目を悪くしてはまずいと電気をつけてから、あらためてランキング画面で止まったゲームに向き直った。
画面を見ている内に、最初はドベだったのに、地道に練習を重ねて、ついにここまで来ることが出来たという嬉しさも徐々に湧き上がって来た。練習時間は休日にしか取れないのに、良くやった方じゃないのだろうか。画面を遷移させて再びチャレンジするも、今度はランキング上位にすら入れない。悔しさはあるけれど、まだ目指す場所は続いていると思えば、やる気もこみ上げる。
水瓶座
これ、駄目なんじゃないか。この任務が始まってから初めて、弱気が頭をちらついた。
長く組織でスパイを続けていたからこそ、敵の追手はこちらの力量を甘く見積もることなく、一切の容赦なく追って来ている。この隠れ家は見つかっていないが時間の問題だろう。味方に連絡はしたが、味方も疲弊しているため恐らくすぐの増援は望めない。
打開策をひらめくために考えているのに、自身の状況のどん詰まり感に絶望がひたひたと押し寄せるばかりだ。
落ち着け、と自分に言い聞かせる。自分を育成した人は平常心でいることを何より重要視していた。落ち着け。長く、長く、深呼吸を一つ。
魚座
「では、これからよろしくお願いいたします」
「えぇ、はい。よろしくお願いいたします」
握った手のひらは分厚く、まるで彼のこれまでの業績を物語るようであった。彼は業界で名を知らぬ者はない程の大人物。そして自分は盤石とした地位のある彼と、対等の関係を結ぶことが出来るところまで来たのだ。相手への信頼が自分への信頼にも繋がる。この二人が手を取り合えば、業界ごとさらに発展していくことは確実だろう。
もう二度と、誰にも夢物語とは言わせない。二人には自分たちがこれから行く道がはっきりと見えるようであった。微笑みを交わし、共に新たなる栄光の道を歩みだす。
社会全体
この宇宙には我々以外の生物は存在しないことがはっきりと分かったと、ある日報道されていた。しかしその報道に耳を傾ける者は誰もいなかった。我々はこの宇宙にただ一つであるはずのお互いを攻撃し合うことに夢中であったのだ。
我々の一部はその事態を嘆いて、争いを嫌う一部だけが存在する楽園を作った。その楽園では暴力はなかったが、お互いを傷つけてしまうことを過度に恐れて皆が独りでいるようになった。そこは独りがたくさん集まるだけの国となった。独りが集まるだけの国は、結局それ以外の我々によって攻撃されて滅亡し、そして我々もまた滅亡し、この宇宙にいた生物は皆存在を終えた。